学研『教育ジャーナル』は、全国の学校・先生方にお届けしている情報誌(無料)です。
Web版は、毎月2回本誌から記事をピックアップして公開しています。本誌には、更に多様な記事を掲載しています。
教育ジャーナル Vol.32-8
■「40分授業午前5時間制」実践レポート
教科等を補完する時間で一人ひとりの「やりたい」を引き出す
40分授業午前5時間制で生まれた時間「ひぐみタイム」。その活用方法とは?①
【全3回】(第1回)
■「40分授業午前5時間制」実践レポート
教科等を補完する時間で一人ひとりの「やりたい」を引き出す
40分授業午前5時間制で生まれた時間「ひぐみタイム」。その活用方法とは?①
全3回【第1回】
(取材・文)
今井 美栄子
昨年度から40分授業午前5時間制を導入し、研究開発学校として実践に取り組んでいる東汲沢小学校。新たに生み出された「ひぐみタイム」は子どもたちの大好きな時間になり、学習への前向きな姿勢も出てきているという。先生たちの試行錯誤の道のりを追うとともに、実際の授業を見せていただいた。
40分授業午前5時間制で生まれた時間「ひぐみタイム」
20年以上前から東京都目黒区の一部の小学校で、先駆的な取組として注目されてきた「40分授業午前5時間制」。近年、他の地域でも徐々に広がりを見せつつある。
神奈川県横浜市でも「40分授業午前5時間制」を導入した学校の一つ、東汲沢小学校が、令和7年度から10年度にかけ、文部科学省研究開発学校として弾力的な教育課程の実践に取り組んでいる。「40分授業午前5時間制」で新たに生み出された時間の活用は学校によってさまざま。総合的な学習、体験活動・特別活動の充実、自学自習、教員の授業準備や研修など、その学校が目指すもの=個性が現れる部分でもある。
東汲沢小学校の最大の特長は、独自の時間「ひぐみタイム」の創設。子どもたちへのアンケートでは、「ひぐみタイムが好き・大切」という回答が9割を超え、学習に前向きに取り組む児童が増加したという。
今回、東汲沢小学校にお邪魔し、その意欲的な実践「ひぐみタイム」について、子どもたちの姿を見学するとともに、先生方の声を取材させていただいた。
東汲沢小学校の本年の児童数は408名。横浜市郊外の住宅地にある学校は、小高い丘の上に立つ見晴らし抜群の立地で、校庭の空は広く気持ちがいい。
同じ建物内に生涯学習や集会の拠点となるコミュニティハウスを併設しており、地域住民との接点も多そうだ。
「40分授業午前5時間制」の導入は昨年度からで、時程は以下のとおり。

「ひぐみタイム」は水曜日を除き、午後の掃除や昼休みのあとに20分間設けられている。5校時の日は「ひぐみタイム」後に下校、6校時の日は続けて40分授業がある。また、「ひぐみタイム」は6校時とつなげて60分の授業にすることもできる。
シートを使ってまずは子どもの課題を共有
「ひぐみタイム」で何をするかを考えるには、まず教員間で目指したい子どもの姿をしっかりと共有することが欠かせない。
そこで、学校教育目標の実現に向けて、どこに課題があって、どのような力を育成していく必要があるのかを把握するため、年度始めすぐに以下のようなシートをつくった。

児童の下校時刻が早くなったことで生まれた時間を使って、教員それぞれが考えながら記入したという。新しく生まれた時間があってこそできたことだ。
そして、シートを集めて分析した結果、「自分の考えを根拠を持って表現する力」 「他者とかかわって学びを深める力」が全体的に足りていないということがわかった。
例えば、自分のしたい話はできるが、いざ考えの理由を問うと答えられない。人の話を聞いてはいるが、そこから自分の考えを更新したり高めたりすることができない、といった具合だ。
そこで、「ひぐみタイム」で、「自分の考えを伝える機会」「他者とかかわる機会」を増やすことなどを検討しているそうだ。
ここで、このシートの項目について補足をしておきたい。
東汲沢小学校では、教育課程全体で特に育成を目指す資質・能力として、「言語能力」「社会情動的コンピテンシー」などを挙げており、シートのチェック項目にも入っている。後者は聞きなれないかもしれないが、一般的に「非認知能力」といわれる力のことだ。
横浜市では令和4年から、社会情動的コンピテンシーに着目して児童生徒を見取り、学校経営に生かしていく調査研究を、横浜国立大学と共同で行っている。その中心となっている鈴木雅之准教授は、東汲沢小学校の学校運営協議会委員であり、運営指導委員でもある。
社会情動的コンピテンシーの中でも、特に「メタ認知」「知的好奇心」「知的謙虚さ」「共感性」の4つの力に着目しているのが、横浜市の特徴だ。(下図参照)

これらは東汲沢小学校の教育課程でも意識されている。
そこで、これらの視点が新たな時間「ひぐみタイム」にも盛り込まれ、以下に紹介するような昨年度の実践につながったというわけだ。

(第2回に続く)
次回の予定
10月12日(月)
教科等を補完する時間で一人ひとりの「やりたい」を引き出す②