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教育ジャーナル Vol.33-5
■「40分授業午前5時間制」実践レポート
教科等を補完する時間で一人ひとりの「やりたい」を引き出す
40分授業午前5時間制で生まれた時間「ひぐみタイム」。その活用方法とは?③
【全3回】(第3回)
■「40分授業午前5時間制」実践レポート
教科等を補完する時間で一人ひとりの「やりたい」を引き出す
40分授業午前5時間制で生まれた時間「ひぐみタイム」。その活用方法とは?③
全3回【第3回】
(取材・文)
今井 美栄子
昨年度から40分授業午前5時間制を導入し、研究開発学校として実践に取り組んでいる東汲沢小学校。今回は、「ひぐみタイム」の授業見学後に行った、先生方へのインタビューをお届けする。
放課後、渡辺誠校長、教務主任の雨宮由里恵主幹教諭、研究主任の上原悠莉教諭、4年1組担任の小山教諭に話を伺った。
「〜したい」という「必然」が学ぶ意欲につながる
―今日の「ひぐみタイム」は、自由で笑いもあって、とても楽しい授業でした。
小山「上手に話したり伝えたりすることは言語能力の部分ですが、友達の調べたことに共感して、興味のあるところに自分の関心をどうよせるかという社会情動的コンピテンシーも育んでいけると思っています。
授業のあと、『自分の(集めている)石を持って来てもいいですか?』と言ってきた子がいたんですよ。友達に見せたいという思いや知的好奇心が、友達とかかわることで刺激される。そこに価値があります」
―家族に話を聞くのに質問票などは渡さなかったのですか?
小山「質問票に頼ることで失ってしまうものもあるような気がします。今回、実は理由まで聞いてこようという話はしていなかったんです。理由が聞きたくなったら聞き、聞いてきたら今度はここがポイントかもね、と子どもたちの様子を見て次のステップへ、という自由さがいいと思うんです。教科等の学習だとやるべき指導内容があるので、そんなふうにはできませんよね。評価もしなくてはならないので、すべての子に同じことを聞いてきて……、となります」
―教科ではできないことに取り組めるということですね。
小山「今日、子どもたちは考えを話す中で、『〜だと思う』には『事実(根拠)』が足りない、話すときは理由が大事だということに気づきました。でも聞かないと理由がわからない、わかりたいから聞きたい、という『必然』がそこに生まれたわけです。
人の話を聞き、人に話すことは、国語だけでなくすべての教科に必要なこと。
『ひぐみタイム』から学習が必ずしも立ちあがるわけではないですが、教科等横断的な『学び方』を見つけていけます。教科等の学習の活性化や、家庭学習にもつながります」
―子どもが自分でテーマや学びの場所を決める場合、何も枠を設けないのですか?
渡辺校長「一人ひとりが自分の問いを生み出し、課題を立て、追究していけるような時間を取ってあげたいと思っています。
この時間は友達と話をする交流の時間にしたい、先生にインタビューしたい、図書館で調べる時間にしたいなど、できるだけ相手・方法・場所などを自分で選べるようにする。主体性を育めばいろいろな力がついてきます。そういう時間を『ひぐみタイム』を核に、生活科や総合的な学習の時間でもつくっていきたいですね」
―好き勝手になってしまう心配はないですか?
渡辺校長「それは、子どもに本気で『どうしてだろう』『やってみたい』という思いをもたせられるかにかかっています。本校の先生たちは、好奇心を刺激するような問いを投げかけることが上手なんです。入学式当日から始めていますから」
上原「入学式直後の教室で〝ぐみ太郎くん〟〝ぐみのびちゃん〟からのプレゼントとして、1年生に3枚の写真を見せて、『この学校にはこんなおもしろいものがあるよ。明日からどこにあるか探しに行こうね』という投げかけをして、二日目には子どもたちが校内を自由に回りました。授業中だから大声は出さない、廊下は歩く、勝手に部屋に入らないということだけ伝えて、細かい手順は決めませんでした。探検しながら人とのやりとりを学んでほしいと思ったので。みんながバラバラなところに行って持ち帰って来たことは、絵カードにして模造紙に貼って地図にし、お互いに『へえ、すごいね』と言い合いました。
子どもたちは、本当にたくさんいろいろな物を見つけて来て、紙が見えなくなるほどでした」
渡辺校長「実は、先生はちゃんと事前に『こういう活動をさせてもらうので』と他の職員に説明しています。それを聞いた周りも『あそこは危ないからドアを閉めておこう』などと連動して動いている。しっかり安全を守った上で挑戦をさせているんです」
仲間づくりから探究へ 安心と挑戦がキーワード
―『ひぐみタイム』の活動内容は、どんなことを意識して決めていますか?
上原「昨年度は最初から決め込むというより、試行錯誤して考えながらの実践でした。何ができるかまずは試してみようということで、各担任がクラスの実態を見ながら子どもに合った活動をしていきました。
その結果、前半は特に『仲間づくり』の時間が多くなりました。話し合いで自分の考えが受け入れてもらえないと感じたら楽しくないですよね。自分の居場所があり、話を聞いてもらえる、安心して話せると思えるように、新しいクラスや先生と関係を築くことが大事です。ほとんどの教員がその意識をもっていたと思います。
仲間づくりの時間は教科の学習の中には特に設けられてはいませんが、そこを飛ばしてしまうとうまくいきません。『ひぐみタイム』でそれができるのはいいですよね。
夏休み前頃からは、学び方を学ぶとか、対話とか、だんだんと探究学習へシフトしていきました。そのように年間の前半と後半で内容が変化していったという印象です」
―1コマ40分午前5時間になってほかに変化したことはありますか?
小山「登校から1校時の間が短くなったので朝は忙しくなった面はあります。でも逆に、どうしたら朝の会をコンパクトにできるかを子どもたちと話し合っています。だらだらをやめようとか、時短のために事前にアプリに書き込んで共有しておこうとか、係からのお知らせは掲示板にしようとか、みんなで工夫をすることにつながったと思います」
上原「子どもの下校が早くなった分、放課後の職員同士の会話は増えている気がします。どんな場づくりが必要だろう、次はこうしようといったことや、子どもの話をかなりしていました。そういうゆとりができたと思います」
渡辺校長「45分が40分になったことを先生たちが学びのチャンスと捉えて考えはじめ、子ども自身も考えはじめている。これはとてもよい効果だと思っています」
雨宮「保護者や地域の理解があったこともよかったです。実は、昨年度最初の学校運営協議会では、『正直、学力が心配です』という意見が出ていました。45分が40分になって、子どもの理解は大丈夫かと。でも、校長の丁寧な説明と『ひぐみタイム』の公開で、『そうか、こんなことをやっているんだ』とかなり理解が進みました。今は学力の低下を懸念する声も聞かれなくなりましたし、『先生たちが明るくてとても楽しそうですね』と言われています」
小山「『ひぐみタイム』の準備は、子どもと話したことをきっかけに展開したり、その場で思いついたことを即興でやったりできる。実際、そういう部分が自分は楽しいと思っています」
最後に渡辺校長がおっしゃった。
「本校の『生み出した時間』の使い方の特長は、まさに先生たちの言ったとおりです。目の前の子どもたちの姿をきちんと見て、本当にこの子たちに必要なことをやっていく。教科等の学習を補完し、すべての子どもたちの可能性を引き出す柔軟な教育課程の核となる、それが『ひぐみタイム』です。
先生たちはチームになり、大胆なことを緻密にやっています。だから私は信頼している。本校のキーワードは『安心と挑戦』ですから」
渡辺校長の力強い言葉で、今年度以降の研究成果もますます期待できそうだ。
(了)
次回の予定
11月9日(月)
福島2026 止まった時計を、自分たちが動かそう①