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SDGs×道徳

〈対談〉SDGs×多様性 ①

(2023年3月16日更新)

認定NPO法人ReBit 事務局長 中島 潤
一般社団法人グローバル教育推進プロジェクト(GiFT) 理事 木村大輔


多様性について子どもたちと考えるとき、学校で取り組めることや配慮すべきことについてお話を伺いました。

自分の内面にある多様性に気付く

司会 ReBit、GiFTの多様性に関する取り組みについてお聞かせください。

中島 ReBitの活動は、大別すると教育とキャリアという二つの領域に分けられます。共通事項として「LGBTQを含めたすべての子どもがありのままで大人になれる社会」という目標を掲げています。
教育事業では、出張授業や先生方への研修を行っています。しかし、私たちが直接学校を訪問するには限界があるので、授業で活用できる教材セットを制作し、無償提供しています。
教育事業に長年取り組んできましたが、子どもの課題が解消されたら、子どもたちはありのままで大人になれるのか? と考えたときに、大人になってからも自分らしく働ける環境がなければ難しいのではないかと感じ、キャリア事業を展開しました。主に企業向けの研修やコンサルティング、障害がある方へ向けた就労移行支援事業を行っています。LGBTQだけでなく、発達障害、介護、がんといったテーマも取り扱い、多様な人が自分らしく働ける職場を考え、実現するお手伝いをしています。

中島潤さん(リモートで参加)

木村 GiFTもReBitの皆さんに近いことを行っています。立ち上げから十年目を迎えますが、最初に掲げたビジョン「多様性の中から新しい価値を生み出す」をずっと大切にしてきました。よりよい社会をつくる意識や志を持つためには、互いを深く知ることが重要です。そのために多様性の理解が必須であると考え、学校や企業への教育活動を行っています。最も大切にしていることは、対話の時間です。研修やワークショップの冒頭では、参加者の生い立ちやこれまでの物語を共有する時間を設け、必ず心のつながりをつくるようにしています。
LGBTQだけでなく、国籍や宗教観、さらに広げれば価値観や生き方にも多様性があります。一人一人の多様性について、深いレベルまで理解し合うことを大切にしています。また、自分の中にある多様性にも気付いてほしいと思っています。「自分の中にいろいろな自分がいる」ことや、「一緒にいる人の一部分しか見ていなかった」ということに気付いてもらえる研修を心がけています。

木村大輔さん(リモートで参加)

自分を大切に、他者も大切に

司会 多様性に関する教育活動を行う中で、子どもたちの様子や変化について感じることを教えてください。

中島 木村さんのお話にあった、自分の内面にある多様性という点は、私たちが行う出張授業でも大切にしています。授業では「多様な性から多様性へ」を合言葉にしていて、他者だけではなく自分自身にも多様性があるということに気付く機会をつくっています。
授業の教育効果について調査をするために、子どもたちに「いろいろなちがいを大事にするために、あなたができる工夫はどんなことですか?」というアンケートを実施しました。結果を分析して五つに大別したところ、最も多かったのは「自分らしさを大切にする」「自分のすきや得意を大切にする」という意見でした。その後に、他者の尊重、違いを受け入れる……などが続いています(下図)。私たちの授業が、自分自身の多様性に気付くきっかけをつくっていることが分かりました。

図 認定特定非営利活動法人ReBit(2021)
「小学校高学年における多様な性に関する授業がもたらす教育効果調査」

授業ではLGBTQやアライ(※1)の講師が、自身の生活やこれまでの歩みを一人のロールモデルの話としてお伝えします。その話を聞いて「LGBTQの人は大変だな」ではなく、自分と同じ部分や違う部分を見つけ、自分はどのように生きていきたいかについて考えるきっかけにしてほしいと思っています。
子どもたちから「自分のふつうと他者のふつうは違うことが分かったので、周りを気にするばかりではなく自分の意思を大切にしたい」という感想をよくいただきます。子どもたちの変化を見た先生から教員向けの研修を依頼されたり、「子どもたちに多様な性を伝えるのは難しいと考えていたが、大人が考えすぎていただけかもしれない」という声をいただいたりします。子どもたちの変化が大人たちへ波及していると感じます。

木村 GiFTの教育活動には協働・共創、社会参画・貢献の四つの柱があり、特に自己理解・受容、他者理解・受容を大切にしています。どんなテーマでも、まず「自分はどんな人か」を問います。そして、自分の判断で自己開示しながら対話し、深いレベルで相手を理解する機会を持つことで、多くの気付きを得ます。
ワークショップの参加者から、「自分自身に対する見方が変わった」という声をよくいただきます。「自分はどうありたいか、他者に対してどうありたいか、自分の内面に問いかけ続け、相手の考えに耳を傾けることで、他者を一面だけで簡単にジャッジしなくなった」という感想はとてもうれしいです。

※1 アライ(Ally)
 LGBTQではないが、LGBTQの人たちを支持、支援している人たちのこと。

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